リスク判定(総合評価)
1.有害性の確認
2.リスク・アセスメント要因:
2−A.量―反応評価(毒性)
2−B.曝露評価(体内進入量)
1日許容摂取量(ADI)、耐容一日摂取量 (tolerable daily intake, TDI)
=人が生涯、毎日摂取しても、安全な摂取量(mg/kg体重/日)
=無毒性量/不確実性係数
=NOAEL /(UF1×UF2×UF3×UF4×UF5×UF6)
無毒性量=動物実験データ(no observed adverse effect level, NOAEL)、公害事例などで、毒性が認められない最大用量、閾値がある場合に限定。放射線障害における発癌・変異性など、閾値の無い場合は不可。
不確実性係数 uncertainty factor, UF(安全係数)=f(動物と人の種差、人個体差、影響の重篤度、実験期間の長さ)。各UFにつきデータの質を考慮して1から10の値を決める。不確実性が小さい(確実なデータ)場合はUF=1となり、大きい場合は10を当てる。
それぞれのUFが大きいとTDIとしては小さい値になり、それだけリスクの程度が大きいと判断せざるを得なくなる。またUFの積が10000以上になる場合はデータの質に問題がありとして利用しないのが原則である。
UF1:種内差つまり個体の感度差。同じヒトでも体質、年令、経験等により物質の影響を受ける程度にバラツキがある。人集団の多様性を考慮し、平均よりも10倍影響を受けやすいと見積り、人を保護するように考慮する。
UF2:種間差つまり実験動物とヒトとのちがい。種が異なると体内の酵素がちがい、物質を代謝する過程に大きな差があることがある。体内器官の差もある。人が実験動物より10倍影響を受けやすいと仮定する。
UF3:暴露期間の差。動物実験データが短期間のものであれば、そのデータをそのままヒトの長期影響評価に使用することはできない。
UF4:低濃度域への外挿つまりLOAELからNOAELへ。無有害量の代りに最低影響量の数値を使わざるを得ない場合も多い。
UF5:データの不完全性。疫学データの質あるいは動物実験データを取得した条件の完全性。GLP要件を満足しているか否か等で判断する。
UF6:暴露経路の差。動物実験データは多くの場合は 経口投与によるデータであるが、シナリオにおけるヒト暴露は吸入あるいは経皮によることが多い。
通常のリスクアセスメントでは、不確実性係数として100が使われることが多い。これは、上記6種の係数のうち、@とAに各10を使い、他の4種はそれぞれ1とすることを意味している。
図 各種の不確実性と変動性 |
|
表 不確実性係数に関する各機関からの提案 |
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利用可能データ |
OECD |
EU |
ECETOC |
US |
1個の急性毒性データのみ |
1000 |
− |
− |
1000 |
応用例.農産物よりの農薬摂取量(ADI=0.2md/kgと仮定した場合)に関して:
山田太郎さん体重50kgにおいて、
食品 |
摂取量g |
農薬濃度ppm |
推定摂取量mg |
ADIx50(kg)mg |
米 |
192 |
5 |
0.960 |
|
果実 |
117 |
5 |
0.585 |
|
野菜 |
253 |
10 |
2.530 |
|
合計 |
|
|
4.075 |
10 |
http://www.smrj.go.jp/keiei2/kankyo/h11/book/3rab/index.htm